TransgenderJapanは、2023年11月19日に新宿中央公園水の広場を集合場所として東京トランスマーチ2023を開催する予定で準備を進めておりましたが、開催を延期いたします。
参加を楽しみにされていたみなさま、また開催にご協力いただいていたみなさまには、このような事態となってしまったこと、誠に申し訳ありません。
延期について
「弊団体共同代表が性暴力を行った」とされる告発に端を発する問題(以下、本件)に関して情報が錯綜しており、現在、多くのみなさまが東京トランスマーチへ参加してよいものなのかどうか判断できない状況にあると思います。弊団体にも、そのような声が多数寄せられています。
この状況は、弊団体が考える「東京トランスマーチというコミュニティ」の趣旨にそぐわないものです。マーチに参加する/しないことが、個々人の立場表明と捉えられることがあってはならないと考えます。このままマーチを開催することは、参加するみなさまを安心・安全ではない状況に晒すことになってしまいます。ですが、今日まで弊団体自身が本件への対応に苦慮するなかで、情報の錯綜を助長させてしまいました。そしてそのことが、みなさまを迷わせるに至ってしまいました。東京トランスマーチを開催するためには、この状況を改善しなければならず、そのためにいましばらくの時間が必要と考え、延期を決定しました。
弊団体の対応の不備により、このような状況を招いてしまったこと、深くお詫び申し上げます。
本件に関する経過・対応について
弊団体と被害を訴えた方との間には、10月7日に性被害の告発がある以前から、深刻なコミュニケーション不全および相互不信の問題を抱えておりました。しかし弊団体は、その問題と性暴力の問題は全く別問題であると当初から認識し、当事者双方から話を聞き、対応を進めました。そして、10月14日には、いったんは問題の解決に向かうことで合意していました。この合意を経て、弊団体は「当該メンバーが果たすべき責任」「弊団体が果たすべき責任」を設定しました。当時弊団体内では、加害を行ったとされるメンバーの行為は事実として公表し、東京トランスマーチの縮小という形で団体としての責任を取るべきだという声が多数あったものの、被害を訴えていたご本人とこの問題や当該メンバーの名前は公開しないという合意が10月14日にあったからこそ、その時点で公開しなかったという経緯があります。
しかし、弊団体が当該メンバーの内部的な処分を含めた今後の対応について協議を進めている最中、わずか数日後の10月21日、複数の団体関係者から、「性暴力の事件を知るに至った人たちの口まで塞ぐ内容」「声明文を公開する」「被害者の意向に反するかもしれないが容認することは到底できない」「酷すぎる。黙っていることは不可能」などといった、二者間の合意にそぐわない提案が出てきてしまい、被害を訴える方はなぜかその提案を容認しました。
このような一連の対応については、被害を訴えられている方に対して失礼がないように、また、法的な問題がないように、弁護士に相談をしながら進めてきました。ですが、一方的に10月14日の合意を破棄されたことで信頼関係は完全に崩れてしまい、被害を訴えている方とコミュニケーションをとることが困難になりました。
弊団体が対応に苦慮する中で、被害側からは一方的に「性暴力の事実をふせている」「沈黙を強いるようだ」といった事実無根の内容を含む情報がさまざまなかたちで拡散され、弊団体はひとつひとつ対応する間もありませんでした。
なお、本件については、SNS等ネット上に溢れる情報は事実無根のものが多くあり、それらを拡散する行為は、被害を訴えている方への二次加害となることのみならず、過去に性暴力被害を受けた方へのトラウマにもつながることになると考えます。SNS上で流布される虚偽の内容は、弊団体に所属する個人の活動の場にも影響を及ぼすに至っており、弊団体メンバーの所属先や家族にまで迷惑が及んでおります。そのため、このような拡散行為は、厳に慎んでくださるよう、お願い申し上げます。また、弊団体への名誉毀損行為を行う団体、個人に対しては、毅然と法的措置を行うことも申し添えておきます。
なお、さらなる詳細については後日、改めて報告いたします。
クラウドファンディングについて
開催延期に伴い、ForGoodによるクラウドファンディングを通じた支援を行っていただいた方の中で、返金をご希望される方には返金対応をさせていただきます。
せっかくのご支援を頂いたにもかかわらず、このような事態になってしまい、謹んでお詫び申し上げます。現在、返金ご希望の受付方法、返金方法等について弊団体内にて調整を行っておりますので、後日、弊団体ホームページ等にて、正式にご案内いたします。
賛同団体のみなさまへ
東京トランスマーチ2023に賛同くださっていた諸団体のみなさまに対しては、事前の同意なく弊団体から一方的に賛同取り下げのお願いをしたことについて、深くお詫び申し上げます。当時、弊団体や弊団体メンバーに関する不確かな情報が飛び交う中で、各団体様に賛同するか否かの判断を迫る状況になっていたということが非常に心苦しく感じましたので、こちらから一律にお願いをさせていただきました。その判断に拙速さもあったと思いますが、今後の推移も見守りつつ、ご理解をたまわればと存じております。
今後の取り組みおよびメンバーへの処分について
弊団体は、性暴力は決して許されない人権侵害行為であるとの認識のもと、性暴力を行ったとされるメンバーが自ら証言した行為はセクシャル・ハラスメントと指摘されてもいたしかたありません。ですが、その判断は第三者の事実認定に基づく必要があり、当該メンバーの処遇については、それを以って検討いたします。
また、弊団体としては、メンバーに対する性暴力に関する教育の取り組みを第三者も交え徹底して行ってまいります。トランスマーチを通じたトランスジェンダーの権利回復、トランスジェンダーへのエンパワメントといった弊団体の活動の意義は、「性暴力は決して許されない人権侵害」と認識することと直結しています。その認識のもと、今後も人権擁護、暴力根絶の活動に、より一層力を入れていきます。
人権回復・反差別の活動について
改めて、弊団体は東京トランスマーチを「トランスジェンダーの人権を訴えるというコンセプトの元、『楽しさ』『交流』『人権アピール』を行う」ものと考えています。これは弊団体の、トランスジェンダー差別に抗う姿勢によって支えられていると考えます。社会の成員であるわたしたちは、誰もが、差別の加害側にも被害側にも立つことを認識したうえで、差別に抵抗していかねばならないと考えています。
弊団体は差別について学ぶなかで、さまざまな別の立場で差別に反対する諸団体のみなさまとつながってまいりました。この連帯を壊すことのないよう、相互に信頼される活動を標榜しながら、活動を続けていきたいと考えています。現在の状況を招いてしまった至らなさを、改めてみなさまにお詫びするとともに、このような姿勢についてご理解をたまわりますよう、お願い申し上げます。
2023年11月9日
TransgenderJapan 一同